研究概要 |
(1)単離した成獣ラット心房筋細胞を培養し,細胞間の刺激伝達が生じ同調収縮が始まる前後のギャップ結合の発達を凍結割断レプリカによる電顕観察で追跡した。末だ同調収縮を認めない3〜4日目に,すでに5〜10個程の小さなギャップ結合粒子斑が散在性に出現した。割断P面の粒子数は細胞間あたり50をこえることから,興奮の安定伝達には少なくとも100以上のギャップチャンネル通路を要すると推定される。4日目以降一時的に線状や帯状の非定型粒子配列を示すものが出現した。7日目には典型的な斑状粒子集合が完成し,活発な拍動興奮の伝幡が多くの心筋細胞に認められた。 (2)心筋型ギャップ結合の構成蛋白コネキシン43のcDNA配列から,細胞外領域と細胞質領域の部分ペプチドshibaー5とshibaー7を合成し,ウサギに特異抗体を作って培養心筋での免疫蛍光標識を行った。2日目に標識を細胞質内に認め,3〜4日目から細胞表面に局在を示した。細胞表面領域の抗体は8M尿素処理により,結合を開裂した場合のみ外表面に対合する標識が認められた。 (3)scrapeーloading法による色素拡散から心筋ギャップ結合伝達の調節因子を培養7〜8日目の心筋で検討した。低カルシウム外液下では7ー9細胞列以上の色素伝幡を認めた。10mMCa^<++>やTPA存在下では4ー6列以下に低下したが,完全な抑制は生じず,多重な因子が調節機構に関与すると推測される。1mMオクタノ-ルとヘプタノ-ル処理後には1ー2細胞列にまで伝幡が抑制され,これを凍結割断レプリカ観察すると,ギャップ結合周囲の細胞膜面のとくにEF面に波状縞模様を認め,これら中級アルコ-ルによるギャップ結合機能の抑制は,膜の脂質二重層に浸潤することにより乱れを引きおこし,チャンネル構造に変化が生じるためであると示唆された。
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