研究概要 |
心筋細胞のNH_4Cl prepulse刺激後に見られるアシド-シスからの回復において、Na^+ーH^+交換系が主役を演じていることを、平成2年度に示した。本年度は、これをさらに確認する実験を行った。マウス胎児培養心筋細胞に2MMフラ-2/AMおよび3MM BCECF/AMを取込ませ、顕微鏡蛍光測光によって、細胞質Ca^<++>濃度(Ca^<++>)iおよびpH変化を記録した。15mM NH_4clを添加すると、心筋細胞のpHは、急激・一過性のアルカロ-シス後、次第に正常へ戻ろうとする。次いでNH_4clを除去すると、急激・一過性のアシド-シスの後、正常に復した。このアシド-シスからの回復は(Na)_0=0および特異的Na^+ーH^+交換阻害剤(30MM)5ー(NーlthylーNーisopropyl)amiloride(EIPA)で完全に阻害された。したがってアシド-シスからの回復は、Na^+ーN^+交換によるH^+の汲み出しによって引起こされることが明らかとなった。通常のNH_<4-> cl prepulseの場合、あるいはEIPAによってNa^+ーH^+交換を阻害し,アシド-シスのままにした場合,(Ca^<++>)iはほとんど変化しない。ところが(NA)_0=0によってアシド-シスからの回復を阻害した場合には、NH_4clおよびNa^+の除去に際して、一過性の(Ca^<++>)i上昇が観察された。この一過性の(Ca^<++>)i上昇は、Na^+ーCa^<++>交換の特異的阻害剤10MM chlorobenzyl dimethyl benzamil(CBDMB)によって完全に阻害された。また細胞外のpH依存性であり、アルカリに傾くほどアシド-シスからの回復は容易となり、一過性の(Ca^<++>)i上昇は顕著となった。(Ca^<++>)_0=0とする一過性の(Ca^<++>)i上昇は認められなかった。したがって、(Na^+)_0=0によってアシド-シスの回復を阻害した際に見られる一過性の(Ca^<++>)i上昇は、Na^+ーCa^<++>交換系によることが示唆された。これらの所見から、NH_4cl prepulse刺激においては、アシド-シスからの回復に直接かかわるのは、Na^+ーH^+交換系であること、(Na^+)_0=0として、アシド-シスからの回復を阻害したときに認められる(Ca^<++>)iの上昇は、Na^+ーCa^<++>交換によることが明らかとなった。
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