研究概要 |
C‐シリ-ズ ガングリオシドのポリシアル酸を認識するモノクロ-ナル抗体M6704を使って,ヒト神経組織の発生と腫瘍化に伴ったポリシアル化抗原の発現パタ-ンを免疫組織学的,免疫化学的に検討した。その結果、発生の初期の大脳では原始皮質,脊髄で基板に存在する未熟な神経細胞の膜表面あるいは神経突起が強く染色されたが,発育するにつれ,その染色性は減弱した。しかし,増殖層にあるmatrix cellは全く染色されなかった。脊髄神経節の神経細胞は染色されなかったが,交感神経節では神経細胞のゴルジ野が強く染色された。 腫瘍組織においては細胞膜や細胞質突起,あるいは神経突起が,脳腫瘍32例中20例,神経芽腫瘍12例中10例で染色された。この様に中枢神経系,末梢神経系で染色性の違いがあるものの,M6704抗原は胎児腫瘍性であると考えられた。 意外な事に,M6704の染色性は有機溶媒処理(たとえばクロロフォルム/メタノ-ル=2:1、v/v)の影響を受けなかった。また,シアリダ-ゼ消化後,抗原性は全く失われることから,M6704の認識する抗原は糖蛋白性のものである事が予想された。そこで,新鮮な癌組織よりSDSで抽出したものをSDS‐PAGE/Western blotting法により分析してみたところ,ヒト脳腫瘍(3/4例),マウス神経芽細胞腫(3/3株)で,M6704と反応する数本のバンドが分子量5.5‐1.4万にかけて観察された。従って,M6704糖蛋白抗原はヒト,マウスに共通して発現しているシアロ糖蛋白であることが明らかとなっ た。今後この抗原分子の化学構造並びに生理機能を明らかにしてゆきたいと考えている。
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