研究概要 |
糖脂質の一種であるガングリオシドGM3には細胞増殖を抑制するという知見が報告されている。その生化学的調節機構についてはその分解産物を介していることが示唆されているが、シアリダ-ゼにもこのような機構との関連が考えられる。我々は至適pH中性のガングリオシド特異的シアリダ-ゼを見出した。このシアリダ-ゼは細胞増殖制御に関連している可能性があり、精製することにした。SpragueーDawleyラットの肝臓を用い、常法に従って100,000xgの遠心および可溶化により総膜蛋白を調製した。可溶化膜蛋白をDEAEーCelluloseのバッチ処理、EAHーSepharose4B columnを用いて酸性シアリダ-ゼより中性シアリダ-ゼを分離した。次に、OctylーSepharoseCLー4B column、DEAEーSephadexAー50 column、最終的にSephadexGー100により収率13.4%、比活性2136.8unit/mgで7122.7倍迄精製された。精製シアリダ-ゼは7.5%SDSーPAGEでは85Kの単量体、SephadexGー100 columnの溶出では72kであった。また、精製シアリダ-ゼをセルロ-スアセテ-ト膜電気泳動後、膜に4MUーNeuAcを浸透させ温置したところ、活性は単一バンドを示し蛋白染色と一致した。さらに、既に宮城らにより報告されている細胞質性中性シアリダ-ゼとの異同または精製過程でのその混入の有無を検討するために精製したシアリダ-ゼの抗体を作製し、我々の抗体と分与された細胞質性シアリダ-ゼ抗体の各々のシアリダ-ゼに対する活性阻害を検討した結果、活性は全く交差しなかった。さらに、精製したシアリダ-ゼと分与された細胞質性シアリダ-ゼの基質特異性を比較した結果、細胞質性シアリダ-ゼがGM3,GD1a以外にα2,3とα2,6Sialyllactoseにも働いたが、精製した膜性中性シアリダ-ゼは一般にガングリオシド基質に特異性が高く、α2,6シアリルラクト-スには全く働かなかった。以上の結果より本シアリダ-ゼは既知のものとは全く異なる酵素であると同定された。
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