研究概要 |
天然に存在する多糖類には中性,塩基性多糖類があり,構成する単糖の種類によってその機能が異なる。シンク細胞あるいはソ-ス細胞の成立には種々の要因が考えられるが,近年細胞膜由来の微量なオリゴ糖の関与が指摘されている。このような状況の中で昨年度以来中性多糖であるデンプン,セルロ-ス,カ-ドラン,ペクチン,ラミナラン等から,また塩基性多糖であるキチン,キトサン等から,酵素あるいは酸分解によってオリゴ糖を切り出し,その断片のもつ二次代謝産物合成経路の活性化に対する影響を検討した。そこで天然多糖をモデルとし,アルファルファ子葉のフラボノイド生合成経路の活性化を4',7ーdihyd roxyflavone ,4',7ーdihydroxyflavanone,medicarpinの蓄積量を指標とし評価した。最も活性の高かったEisenia bicyclis由来のラミナランをTFAにより加水分解したところ,活性が著しく増大した。このことから加水分解により活性単位が切り出されることが示唆された。そこでこれを活性炭カラムに供したところ80%MeOH溶出区に活性が認められ,それをBioーGe1 Pー4カラム,逆相HPLCにより分取を行い,活性画分を得た。これをピリジルアルミノ化し,LCーMSに供したところ質量1070と1232に相当するイオンピ-クがそれぞれ多数確認できた。即ち,この活性画分は結合様式の異なった6糖と7糖の混合物からなることが明らかとなった。また,カビ,放線菌細胞壁を構成する塩基性多糖キチンを濃塩酸で加水分解し,キチン6糖を調制し還元アミノ化反応により還元末端にフェノ-ル性化合物チラミンを導入した。これをアルカリ部分脱アセチル化し,エンドウに対するエリシタ-活性をファイトアレキシンであるpisatinの蓄積量を指価したところ,これまでエンドウ・エリシタ-と考えられていたキトサン6糖より2.4倍の活性を示した。 LCーMS分析により本オリゴ糖は2脱アセチルキチン6糖であることが明らかとなった。
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