研究概要 |
本研究では多段階発がんのメカニズムを、発がんプロモ-ション期にしぼり、特にCキナ-ゼによるシグナル伝達と遺伝子発現について研究を進めている。 1上皮細胞で発現しているCキナ-ゼ分子種の同定 昨年度の研究において、マウス皮膚cDNAライブラリ-よりカルシウム非依存性のCキナ-ゼにPKC_7をクロ-ニングした。本年度はこのCキナ-ゼ分子種が上皮系に多いことをmRNAおよび蛋白レベルで証明した。mRNAの発現量は皮膚、前胃〓で扁平上皮においては脳の発現レベルの10倍にも達っしていた。組織内の局在性をin situhybridization法および免疫染色法によって検討したところ、増殖している基底細胞層よりも分化している上層の細胞に特異的に発現していることがわかった。このような傾向は,皮膚,舌,食道,前胃,小腸において一致して認められた。また,これとは別に,筋肉に特異的なnPKCDも分離した。 2Cキナ-ゼ標的蛋白の同定 これまでハマウス表皮におけるCキナ-ゼ標的蛋白4種を同定した。本年度は分子量28Kの蛋白が,ストレス蛋白hsp28と同定した。 3皮膚の構造と機能の解析 我々は皮膚を上皮細胞の典形的なモデルと考えて研究を進めている。この一連の研究のなかで,本年度は皮膚の三次元培養と毛のうの遺伝子の分離に成功した。特に前者は、今後皮膚の増殖と分化のメカニズムを分析していく際の強力な手段となるであろう。
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