研究概要 |
嫌気的条件での大腸菌硝酸呼吸系遺伝子群(nark:硝酸輸送蛋白質をコ-ド)とnarCHJI(硝酸還元酵素複合体をコ-ド)の発現には,各プロモ-タ-上流にある制御領域にそれぞれ作用する二つの転写促進因子が必要である.一つは,分子状酸素センサ-であると同時に嫌気呼吸系遺伝子群の活性化因子であるFNR蛋白質である.他の一つは,硝酸イオンに対する二成分制御系:NarxーLでの制御因子としてのNarL蛋白質である.それら両制御蛋白質からなる二制御因子系(Two Regulator System)によるnarオペロンの転写制御機構の究明と,両制御蛋白質のそれぞれが認識するDNAの高次構造の決定とを目的とした本研究において,平成3年度には次のような研究成果を得た. 1.平成2年度に確立していたNarLとFNRの大量発現系を利用して,それら両制御蛋白質の精製を検討した.FNRに対してはその精製法を確立するとともに,その家兎抗血清を作製した.一方,NarLの方は,最終精製段階におけるその蛋白質の大半が沈澱するという問題点を残しており,現在,その解決策を検討中である. 2.精製FNRは,単独では,narオペロンへの特異的な結合を起こさなかったが,RNAポリメラ-ゼのホロ酵素およびコア酵素の存在下では結合するとともに,その酵素の結合能を増加させた。一方,シグマ因子との共存下では,FNRは結合しなかった. 3.NarL非存在下でのin vitro転写実験において,narCHJI・narKの両プロモ-タ-からの転写は起こらなかった。しかし,narX(硝酸センサ-をコ-ド)のプロモ-タ-を含むそのnarKのフラグメントではnarXの方に対応した転写が観測され,その転写活性はFNRによって抑制されていた. 4.現在,narオペロンに対する精製FNRと部分精製NarLとの協同的な転写制御のin vitro実験を進行中である(平成4年2月)
|