研究概要 |
本年度は,(1)分裂面決定因子である分裂停止突然変異株colaAの変異遺伝子産物のp85が細胞質分裂の主役である収縮環微小繊維形成の重合核として,細胞周期の何時役割を演じるかについて検討した。細胞周期の種々の時期にテトラヒメナ・アクチンのアナログとなるウサギ骨格筋アクチンを注射したところ、非機能的な収縮環がp85を重合核となってできあがり、特定の時期に注射した時のみ長期にわたる分裂停止が人為的に誘導されることが判り,それは分裂溝形成直前の17分間に限られることが明らかになり、p85の分裂予定赤道面に配列する時期と一致した。 (2)細胞分裂が収縮環微小繊維の収縮と同時に繊維の脱重合を起しながら進行することが示唆されてきたが,その実体はこれまで殆んど明らかにされてこなかった。我々は,アクチン繊維の脱重合因子であるプロフィリンをテトラヒメナで同定し,性状を調べ,かつ,分裂溝の収縮環アクチン微小繊維と共存することをつきとめた。収縮環の収縮と収縮環繊維の脱重合にプロフィリンが果す役割を検討するため,免疫電顕及び抗プロフィリン抗体注射などの実験を行っている。 (3)テトラヒメナの中間径繊維蛋白質と相互作用する49Kdの蛋白質が繊毛虫ユ-プロテスのDNA複製バンドに特異的に局在することをつきとめた。この蛋白質の遺伝子をクロ-ニングし,その塩基配列を調べたところ,EFー1aと酷似していることが判り,興味深い研究に縦がる可能性が示された。EFー1aは蛋白合成伸長因子であるばかりでなく,ファ-ジQβのDNA複製因子として,また最近,アクチン微小繊維や微小管を束ねる因子らしいことが示唆されるようになってきた。これらのことに基づいて,繊毛虫におけるDNA複製時のEFー1aの役割やcdaCというアクチン束化因子に欠陥をもつ分裂停止突然変異株の変異遺伝子産物とEFー1dとの関係を今後検討したい。
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