研究概要 |
酵母サッカロミセス・セレビシエの細胞周期G1期に欠損のある温度感受性変異株ts46を用いて,ts性を相補するDNAをクロ-ン化し染色体VII番由来の,2.5kbのORFを持つ遺伝子が得られている。野生型RAY3Aの遺伝子破壊株は増殖可能なので,増殖に必須な遺伝子ではないが,αファクタ-に3倍程度感受性が高く,しかも透明はハロ-を形成した。αファクタ-による増殖阻害からの回復に欠損があると考えられる為,RAI1(Recovery from α‐factor inhibition)と名付けた。活性型サイクリンCLN3'により,部分的にts性が回復することが示され,サイクリンの機能発現に関与している可能性が考えられる。又,RAI1遺伝子は,同じ表現型を示すts25変異株のシングルコピ-サプレッサ-であった。遺伝解析から,RAY3A株には,ts25変異のサプレッサ-が存在することが判っていたが,掛け合わせで生じた3種の野生型株のRAI1遺伝子を破壊すると,そのうちの一つが,温度感受性になったことから,RAI1とTS25遺伝子の両方の欠損により初めてts性を示すと説明できた。現在,TS25遺伝子のクロ-ニングを行っている。ts25変異のマルチコピ-サプレッサ-として単離されたSRS1(Serine rich suppressor)遺伝子は染色体IV番由来で,N末端に分泌シグナル配列を持ち,セリンの多い(全体31%)分子量3万9千のタンパクをコ-ドしていた。サプレッションのメカニズムについては,解析中である。αファクタ-とサイクリンをつなぐシグナルトランスダクション経路に関わる種々の遺伝子のノ-ザン解析や,マルチコピ-サプレッサ-の単離,bcy1との二重変異による致死性テスト,他のcdc変異との二重変異株の形態変化などを調べることによって,遺伝子間の相互作用を探り,それぞれのタンパクの果たす役割りを知る手がかりとしたい。
|