研究概要 |
我々は,種々の環境ストレスのうち低温(5℃)がイネ植物に及ぼす影響を遺伝子発現のレベルの違いで検出しようと研究を進めてきた。独自に開発したcDNAライブラリ-作成法及びサブトラクション法〔Nucleic Acids Res.18:1071(1990),Plaut Cell Physiol.32:in press(1991)〕により低温処理で特異的に誘導される3種のイネcDNAクロ-ンの分離に成功してきた。これら3種のクロ-ンは、低温処理との関連が示唆されているアブシジン酸の処理あるいは高浸透圧(0.5Mマニト-ル)処理によっては誘導はおこらず,また熱ショク処理によっても誘導されない。更には1度低温で誘導されたものを常温25℃に戻してやると転写レベルでの誘導が全くおこっていない事も確認している。従ってこれらのクロ-ンは低温処理により特異的に発現が誘導されると結論した。 これらのクロ-ンのうちLip19と命名したものは1323塩基対からなり,1次構造解析及びセンス鎖の同定などより約19,000の分子量のタンパク質をコ-ドし,その遺伝子産物はタンパク質デ-タベ-ス検索の結果トウモロコシ由来のジッパ-モチ-フをもつDNA結合タンパク質であることが明らかになっている。 ゲノミックサザン法によりlip19遺伝子は1コピ-であることが判明した。λgtloの部分ライブラリ-より,ゲノミッククロ-ンを4kbのEcoRI断片として単離した。物理地図及び1次構造の解析により,lip19は翻訳領域,非翻訳領域を問わず挿入配列をもたないことが明らかとなった。現在,E.ColiのTクポリメラ-ゼ/Tクプロモ-タ-発現系で作らせたLip19を用い,DNA認識配列の同定を行っている。
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