研究概要 |
本年度は、1)ラット脳内のド-パミン作動性のD1あるいはD2受容体がバゾプレシン分泌を指標とするストレス反応の発現に関与しているかどうか、2)恐怖の情動ストレスを加えたラットの大脳基底核のペプチド画分のうち含量の減少する画分があるかどうか、を調べる実験的研究を行った。 D1受容体を置択的に阻害するSCH23390(0.0025‐2.5mg/kg,s.c.)は肉体的ストレス(高頻度、1分間のフットショック)に対するバゾプレシン分泌増強反応を用量依性に阻害したが、高張食塩水注射に対する分泌増強を阻害しなかった。また学習実験によって加えた恐怖の情動ストレスに対するバゾプレシン分泌抑圧反応には無効であった。D2受容体阻害物質であるスルビライドはバゾプレシンの情動ストレス反応を阻害しなかった。 間欠的フットショックを30分間加えるやり方で情動ストレスをラットに加え、直後に脳を摘出し、2分間の電磁加熱後大脳基底核を切り出した。組織を塩酸・酢酸中で加熱、ホモゲナイズして上清をとり、これを限害ろ過によって10k以下の成分を採取し、ノルマルヘキサンで脂質を除去した後に凍結乾燥した。得られたペプチド試料をゲルクロマトグラフ(TSK‐G2000WXL)で各画分を逆相HPLC(TSK‐GELODS‐120T)でさらに展開し、215nmで吸光度を測定した。ショック電流がゼロであること以外は同じ操作を加えた対照群の画分と比べて含量の減少した画分が3ピ-ク存在した。これら3画分を合成ペプチドTRH,オキシトシン、バゾプレシン、CCK8、ソマトスタチン、CRF41、SP11のピ-クと比較してみたがいずれも一致しなかった。今後動物数を増して統計的に解析すること、組織量を増してアミノ酸分析を可能にする方向に実験を進める予定である。
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