研究概要 |
ミトコンドリア脳筋症は、KearnーSayre症候群を含むCPEO(chronic progressive external opthalmoplegia)、MERRF(myoclonus epilepsy associated with raggedーred fibers)およびMELAS(mitochondrial myopathy,encephalopathy,lactic acidosis strokeーlike episodes)の3型に分類される。これまでCPEOではミトコンドリアDNA(mtDNA)に欠失があることが発見され、MERRFでは、mtDNAのtRNAリジン遺伝子上の点突然変異が証明された。残るMELASに関しては、我々が昨年mtDNAのtRNAロイシン(UUR)遺伝子のDHル-プ上(塩基番号3243)の点突然変異を世界に先駆けて報告した(Nature348,1990)。その後の分析でMELAS患者40名中32名(80%)にこの変異があることが明らかとなったが、明らかにMELASと診断される残る8名には、この変異が観察されなかった。そこで、これら8名に関して、mtDNAのtRNA遺伝子をすべて含む領域の塩基配列を決定した。その結果、3名の異なる家系の患者で、新たに塩基番号3271のTからCへの点突然変異を発見した。この変異はMELASの主要な変異(塩基番号3243)と同じくtRNAロイシン(UUR)にあるが、アンチコドンステム上の変異である。ミスマッチプライマ-を用いたPCR法による簡便なDNA診断法を開発・応用したところ、他のミトコンドリア脳筋症(46名)、3243の変異のあるMELAS(32名)および正常対照群(50名)では、この変異は観察されなかった。さらに3名の患者では、正常型と変異型が混在(ヘテロプラスミィ-)することが明らかになった。以上より、tRNAロイシン(UUR)上の2種類の点突然変異が大部分(90%)のMELASの患者において、この疾患の発症と関連していることが明らかとなった。
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