研究概要 |
これまでに,血小板の凝集を惹起するThrombin,ADP,PAF等の物質は強い内皮依存性弛緩反応を惹起し代償的に局所血流を調節すること,さらにLDLの存在は速時的かつ可逆的にこの弛緩反応をほぼ完全に抑制することを明らかにした.Lysolecithin acyltransferase(LAT)は,LDLにより活性が亢進され,また内皮細胞(EC)中のLAT活性を抑制すると内皮依存性弛緩反応が惹起される.本研究はLDLの内皮依存性弛緩反応抑制機構を明らかにする目的でEC中のLAT活性を指標としてLDLとECの相互作用につき検討した. ECにLDL(1mg protein/ml)を作用(10min)させ,直ちにLDLを除去したのちEC中のLAT活性を測定したところLDLによるLATの活性化は認められなかった.しかしLDL存在下,ECにThrombinを作用させると,EC中のLAT活性はLDL非存在時に比し著明に活性が上昇した(約8倍).Thrombin単独刺激では対照と差異はなかった.またECに添加するThrombinの濃度を変化させて検討したところ,LDL存在時Thrombin濃度依存的にLAT活性は上昇し,0.5U/mlでピ-クに達し(約6倍),ブタ冠動脈における最大の内皮依存性弛緩反応を惹起する濃度と一致した.LATの活性化は3分後に有意に上昇し20分で最大となった(約6倍).OAGとIonomycin刺激でも同様な活性化がみられ,Staurosporine,またはNeomycinの存在で活性化は著明に抑制された. 以上のことによりLDLによる内皮依存性弛緩反応の抑制にLDLによる内皮細胞内の特定酵素活性の変化が関与する可能性のあることを示唆している.
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