研究課題/領域番号 |
03268208
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
唐木 英明 東京大学, 農学部, 教授 (60011912)
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研究分担者 |
佐藤 晃一 東京大学, 農学部, 助手 (90205914)
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研究期間 (年度) |
1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1991年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | EDRF / 血管内皮細胞 / エンドセリン / 細胞内Ca^<2+>量 |
研究概要 |
血管内皮細胞からは内皮依存性弛緩物質(EDRF)、内皮依存性収縮物質(EDCF)、内皮依存性過分極物質(EDHF)およびプロスタサイクリン(PGI_2)などが産生され、血管の機能調節に重要な働きをしていると考えられている。特に、近年発見させたEDCFの一つであるエンドセリンは血管平滑筋を収縮させるだけでなく、内皮細胞にも作用してEDRFを放出させることが知られており、これらの相互作用の生理的意義についても多くの注目を集めている。そこで、本研究ではカルバコ-ルやエンドセリンなどのEDRFを産生させる作動薬を用いて、血管内皮細胞からのEDRF遊離機構における細胞内遊離Ca^<2+>([Ca^<2+>]_i)の役割を明らかにするため、血管内皮細胞あるいは平滑筋細胞の[Ca^<2+>]_i変化と平滑筋収縮の変化をCa^<2+>蛍光指示薬fura‐2を用いて経時的に同時測定した。 カルバコ-ル、ヒスタミン、エンドセリン1および3はいずれも内皮細胞の[Ca^<2+>]_iを増加させるが、カルバコ-ルとヒスタミンは[Ca^<2+>]_iの増加が持続するのに対して、エンドセリンによる[Ca^<2+>]_iの増加は一過性であった。この内皮細胞の[Ca^<2+>]_i動態はノルエピネフリン収縮に対する内皮依存性の弛緩作用とよく対応し、カルバコ-ルおよびヒスタミンは持続的な収縮抑制を生じるが、エンドセリンによる収縮抑制作用は一過性であった。さらに外液のCa^<2+>を除去した実験系から、これらの内皮細胞の[Ca^<2+>]_iの増加は小胞体からのCa^<2+>遊離と外液からのCa^<2+>流入によることが明かとなった。さらにCa^<2+>チャンネル阻害薬であるベラパミルは内皮細胞の[Ca^<2+>]_iの増加にほとんど影響しなかったことから外液からのCa^<2+>流入は電位依存性Ca^<2+>チャネルを介していないことが示唆された。N^Gモノメチル‐L‐アルギニン(LNMMA)はL‐アルギニンからのNO産生を阻害することが知られているが、カルバコ-ル、エンドセリン1および3による内皮依存性弛緩作用に対して内皮細胞の[Ca^<2+>]_iの増加には影響せずに抑制した。 以上のことから内皮細胞からのEDRF遊離には内皮細胞の[Ca^<2+>]_iの増加が必要であり、この[Ca^<2+>]_iは小胞体からのCa^<2+>遊離と電位依存性Ca^<2+>チャネル以外のCa^<2+>流入経路を介した外液からのCa^<2+>流入に依存していることが明らかにされた。また、EDRFの本体であると考えられているNOの合成系を阻害するアルギニンの誘導体 LNMMAは、作動薬による内皮細胞の[Ca^<2+>]_iの増加には影響せずに、直接NOの合成系を抑制することにより内皮依存性の平滑筋収縮抑制を阻害することが示唆された。
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