研究概要 |
平滑筋における収縮の調節はアクチン側とミオシン側の2つの経路が存在する。本年度はアクチン側の経路に焦点をあて、これに係わるファクタ-の探索を行った。ニワトリ砂嚢平滑筋より収縮制御因子として、p33(カルポニン)の分離とその諸性質を調べた。この抗体を作製し、native thin filamentsの構成成分であることや血管平滑筋中に分子量が異なるタイプが存在することを見い出している。 カルシウムイオンによる収縮へのシグナルはカルモデュリンを介してカルデスモン,ミオシン軽鎖キナ-ゼヘ伝えられることが知られている。我々はS100タンパクがカルシウムシグナルをカルデスモンーアクチン系に伝達することを既に報告している。本年度はS100タンパクがp33ーアクチン間の結合を制御することを見い出している。また、アネキシンファミリ-に属するカルシメジンやp80,p11などの(a^<2+>ー結合タンパク質を平滑筋より単離し、カルデスモン,p33の機能調節への関与を調べたところいずれも影響を与えなかった。 血管平滑筋は内皮細胞の有無などの環境変化に応じ、そのphenotypeが変化する。そこでラット頚動脈を材料とし、バル-ンカテ-テルで血管内皮細胞を剥離後の平滑筋の収縮関連タンパク質の発現,分布等の変動を本年度から調べ始めた。収縮型と比較して肥厚した内膜に分布する合成型平滑筋においては低分子量型のカルデスモンが出現していることやp33の含量が非常に低下していることが生化学,形態学の手法を用いて見い出している。 バル-ン法は血栓の除去に使用されており、血管内皮細胞と平滑筋の関係を調べる有効な手段のひとつであるため、次年度はこのテ-マを中心とし取組むことを計画している。
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