研究概要 |
熱・亜熱帯圏の果実の重要害虫である数種のDacus属ミバエについて雄誘引成分の化学分析と生理・生態学的意味についての解析を行った。 1.ミカンコミバエ類の誘引因子の追跡 マレ-シア・シンガポ-ルに分布するDacus dorsalis complexに属する種(Mal B)を強く誘引するSpathiphyllum属の植物より,従来の誘引物質メチルオイゲノ-ルとは異なる物質の存在を確認した。現在,活性成分の精製・単離を行っている。 2.ウリミバエの誘引因子の虫体内取込み過程の追跡 ウリミバエの雄はキュ-ルアに誘引されるが、Dendrobium属の花に含まれる誘引成分は4ー(4ーhydroxyphenyl)ー2ーbutanoneであることを,マレ-シア産のD.anosumsを用いて同定した。雄成虫は同成分を直腸分泌腺に選択的に蓄積するが,その取り込み過程を経時的に測定した。雄ミバエは摂取後6時間以内に腺器官に取り込み,数週間にわたって貯蔵する事実が明らかとなった。 3.ウリミバエ雄直腸腺貯蔵物質のアロモン効果の解析 ウリミバエが積極的に虫体内に蓄えるフェニルブタノイド,安息香酸エステルならびに1,3ーノナンジオ-ルについて,捕食性動物(鳥,トカゲ類)に対する忌避試験を実施した。1,3ーノナンジオ-ルのヤモリに対する顕著な摂食阻害作用を認めることができた。 今後,ミカンコミバエ近縁種間については,雄直腸分泌物の微量分析をすすめ,相互の成分比較,その生理・生態学的な意味づけを進めてゆく予定である。ウリミバエについては,同物質群のアロモンおよびフェロモンとしての機能をさらに詳細に追究する必要がある。
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