本研究の目的は、多種が共存する水系マイクロコズムの作製と、そこで多種共存を可能にしている生物間相互の解析である。本研究では生物組成が完全に既知で、任意の生物組成からなるサブシステムが作れるマイクロコズムの作製を試みた。また順次種の多様性を増加させた時、他の種を駆遂することなく構成種として定着した場合、あるいは定着しなかった場合について、既存の生物間相互作用のネットワ-クがそのまま保持されるのか、あるいは関係構造が変化してしまうのかと言った、種の多様化にともなう関係構造のダイナミックスを明らかにしようとした。当研究課題を遂行するために、研究手順として順序だった積み上げ方式を取った。そこで本年度は当課題の最終目的である「種間相互作用の変化過程」の解析に適したマイクロコズムの作製の段階までを研究の中心課題とした。研究実施項目は以下の通りであった。1)水系マイクロコズムの構成種の選定および単離培養法の検討を行った。2)順次種数を増加させ、共存可能な種の組合せと共存不可能な種の組合せを明らかにし、生物間相互作用のネットワ-ク構造を明らかにしようとした。 主な結果は以下の通りであった。マイクロコズムの構成種の内、厚生動物としてTetrahymena thermophtla、およびEuglena gracilisを検討した。窒素源を含まない無機栄養塩培地に5段階の濃度の異なったプロテオ-ズぺプトンを入れた培地で単一培養および二者混合培養を行った。これらの培地でE.gracilisは単独で生存できたがT.thermophlaは単独では生存できなかった。ところが、E.gracilis存在下ではT.thermophilaはE.euglenaを摂食しないにも係わらず、生存でき、共存系が成立した。この単純な系、培地ーT.thermophilaーE.grailia系においてE.gacilisの代謝産物の共存系に果たす役割の重要性が示唆された。
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