研究分担者 |
大嶋 孝吉 岡山大学, 理学部, 教授 (10114414)
高田 慧 筑波大学, 物理学系, 教授 (10015779)
石黒 武彦 京都大学, 理学部, 教授 (50202982)
梶田 晃示 東邦大学, 理学部, 教授 (50011739)
豊田 直樹 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (50124607)
KACHIDA Kazushige Okayama University,Department of Physics,Associate Professor (50025491)
SUZUMURA Yoshikazu Nagoya University,Department of Physics,Associate Professor (90108449)
FUKUYAMA Hidetoshi University of Tokyo,Department of Physics,Professor (10004441)
TOKUMOTO Madoka Electrotechnical Laboratory,Senior Researcher
TAKAHASHI Toshihiro Gakushuin University,Department of Physics,Professor
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研究概要 |
この研究の目的は,低次元電子系をもつ有機導体において,電子間クーロン相関が低次元電子の振る舞いに与える影響を明らかにすることである.TMTSF系物質,BEDT-TTF系物質,およびDCNQI-Cu系物質について次のような著しい成果を得た. まずBEDT-TTF系物質では,磁気抵抗にたいする2次元的フェルミ面の形状効果を発見し,これを他の物質でのフェルミ面形状の決定に応用できることを示した.また,低温でフェルミ面の不安定性に関係した反強磁性的状態があることを発見した.K塩,NH4塩,Rb塩について現象を明らかにし,Rb塩はK塩と本質的には同様であることを示した.K塩の「反強磁性」と考えられる状態の磁気異方性,フェルミ面形状の圧力変化,K塩の「反強磁性」状態の圧力変化などを調べた.K塩の「反強磁性」状態は,8K以下の低温,23T以下の弱磁場,5kbar以下の低圧領域で存在することを明らかにした. TMTSF系物質では,1次元的フェルミ面の磁気抵抗に対する形状効果という新規の現象を発見し,その理解を確立した.また,低次元性と電子間相関とによって起こる磁場誘起スピン密度波状態とこれに関連する電子物性のより正確な理解を得た.C104塩の高磁場極限相が量子数ゼロのスピン密度波状態であると解釈でき,負イオンの作るポテンシャルがこの相の現れかたや磁気抵抗の早い振動と関係していることを示した. DCNQI塩では,金属-絶縁体-金属リエントランス転移の詳細を解明した.この系統の物質の金属-絶縁体転移の本質は,DCNQIのパイ電子バンドのフェルミ面不安定性に関係するパイエルス転移と,銅のd電子のバンドについてのモット転移であることを示した. これらの系では,低次元性,電子相関,電子格子相互作用,および圧力による弱い3次元性の介入のすべてが本質的な役割を演じていると言える.
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