配分額 *注記 |
8,100千円 (直接経費: 8,100千円)
1993年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1992年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1991年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
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研究概要 |
本研究は,居方という視点から公的空間を対象とした比較文化的フィールドワークを行い,行動と空間の関係,場所の質について考察するものである。 1章では,人がある場所に居る様子・その時周囲に生まれる種々の関係を取り扱う概念として「居方」(いかた)という用語を提案した。日本,フランス,台湾を中心とした都市の公共空間における様々な居方の事例分析から,公共の中の自分の世界,居合わせる等のタイプを見いだし,そこに含まれる独特の構造について考察した。 2章では,台北旧市街の龍山寺のフィールドサ-ペイより,この寺が宗教施設であるだけでなく,近隣および広域からの人々による極めて多様な利用形態をもつパブリックスペースであること,コミュニケーションの種類の幅,集団の構造の幅が非常に広く,かつ各々の集団が隣接して存在する日本ではあまり見られない居方の空間であることを明らかにした。 3章では天津(中国)の集合住宅の調査から,一見日本のLDKと大きな違いのないように見える平面構成でありながら,家族と客が全ての部屋を利用する住様式であり,部屋と行為・家族の対応関係が日本のLDKとは極めて異なっていることを明らかにした。 以上を通じて公共空間における,居方の種類,場所の性質,空間と行動の対応が,フランス,台湾,中国と日本では,かなり異なっている事例があることを明らかにした。概して,現代日本の公的空間では,他者との関係の種類,アクセシビリティの許容性の点からみて限定されている。この背景には空間に組織や行為・機能を割り当てる機能主義的計画論,人間と環境についての機械論的モデルがあることが示唆される。
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