研究概要 |
本研究は,個々の結晶粒界と粒界会合部(三重線)が材料の変形,破壊時に果たす役割を明らかにすることにより,機械的性質に優れた多結晶体が持つべき粒界と粒界三重線の構造についての知見を得ることを目的として始められた.得られた結果の多くはこれまでに国内外の論文集において公表され,関係する研究者が利用できるものとなっている.詳細についてはそれらへの参照に任せたいが,本研究の主要な成果は以下のようにまとめることができる. 1.変形と破壊において粒界と粒界会合部が果たす役割:金属や単一相の合金の単結晶,双結晶そして三重結晶を育成し,引張試験,クリープ試験そして疲労試験を行い,それらの変形と破壊の挙動を広範囲に調査した.粒界と粒界三重線における変形の不均一性とクラックの発生,伝播を定量的に評価し,それらの粒界と粒界三重線構造依存性を系統的に議論した.特に,粒界三重線の強度への寄与とその温度による変化を明らかにし,多結晶材料の強化のために必要な粒界と粒界三重線の構造を示した. 2.多結晶材料における粒界会合部の安定性:本研究では特殊粒界(Σ3粒界などの低エネルギー粒界)が会合する三重結晶を主な試験片とした.再結晶させた銅の双結晶にこのような粒界会合部が安定に存在することを示し,三重結晶試験片で得られる結果の一般の多結晶材料への応用について議論した. 3.異相界面が機械的性質に及ぼす影響:複数の相からなる材料の実用的重要性を考慮し,種々の方位関係にある(γ/α)二相ステンレス鋼双結晶を拡散接合法によって作製して,異相界面による結晶粒の変形の拘束と界面における超塑性すべりを調べた.
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