研究概要 |
1.Linear perspectiveによる研究 格子縞の上に置かれた直方体の投影図を,投影角度を変数として作成した.それらを提示角度を変えて提示し,縞の幅および直方体の幅および高さの評定実験を行った.その結果,恒常性は,a.対象の現実性および具象性に依存し,現実性および具象性が高いほど,恒常性が強く現れること,b.縦と較べて,横方向の恒常性が高いこと,が明かにされた.この事実は,必然的に形の恒常性が低下すること,C.それらに基づいて,空間認知に特色ある空間の歪みが現れる,という認知的特徴が指摘された. 2.Fraser錯視図およびMuller-Lyer錯視図による研究 Fraser錯視図を回転するとρ運動が観察される.その運動の説明する心的座標軸設定モデルを構成した.Muller-Lyer錯視図による研究では,錯視図を適切な時間条件で同一場所に継時的に提示する実験を行った.この時認められる,いわゆるα運動の生成過程を考察し,それがβ運動であることを指摘した. 3.Rivalry between constancy and shift対象の恒常的認知は,極めて重要な認知の在り方である.しかし,他方,人は対象を多義的に認知する.この両認知過程の間に存在する認知的葛藤について論じた. 4.観察者の移動がもたらす視覚像の運動に基づく奥行き知覚 観察者が身体を左右に揺らせると,運動視差が生じる.その事態を,現実場面と仮想現実場面で構成し,奥行き判断の違いを検討した.実験の結果,観察距離が小さい場合には両者間にあまり差がないこと,大きくなると,現実条件よりも仮想条件で,距離を過大視する傾向が明らかにされた.仮想現実の刺激画像を観察者の運動に対応させて動かすと,観察距離の変化による差が小さくなる傾向がみられた. 以上,錯視と仮現運動の研究から,パターンと空間の認知に関する特色ある研究成果を得た.
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