研究課題/領域番号 |
03451022
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
心理学
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福沢 一よし (福沢 一吉) 早稲田大学, 文学部, 助教授 (00156762)
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研究分担者 |
本間 大一 早稲田大学, 情報科学研究教育センター, 助手
川村 満 (河村 満) 昭和大学, 医学部・神経内科, 助教授 (20161375)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1992
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研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
1992年度: 200千円 (直接経費: 200千円)
1991年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 神経心理学 / 純粋失読 / 後頭葉損傷 / ボカシ刺激 / 漢字 / 視覚失認 / 周波数特性 / 脳梁膨大 / 右同名半盲 |
研究概要 |
推測読みに関する暫定的モデルを考案し、モデルの仮定から演繹された以下の仮定を検証した。被験対象は後頭葉損傷者群で失読を呈する患者(A群:統制群)と呈さない患者(B群)を対象に検証した。(1)A群患者は単純画数漢字の音読の方が複雑画数漢字の音読より成績が有意に良い。(2)A群患者は具象漢字の音読の方が抽象漢字の音読の方が成績が有意に良い。(3)B群患者は単純画数漢字の音読の方が複雑画数漢字の音読より成績が有意に良い。(4)B群患者は具象漢字の音読の方が抽象漢字の音読の方が成績が有意に良い。(5)B群患者はA群患者に比して音読成績が有意に低い。(6)各被験者とも画数単純・複雑性と具象・抽象性間には交互作用がある。【刺激】1つの漢字を段階的にボカシをかけたものを27個使用した。【装置】実験の制御にはAVタキスト・スコープおよびパーソナルコンピュータを用いた。【手続】実験の先立ち、被験者が刺激を音読可能かどうかを検査した。次に被験者に画面上の文字を音読するように求め、被験者が音読出来ない場合は、1σ分だけボカシの少ない画像を提示しさらに音読するように求めた。この方法で被験者が音読に成功するまでボカシを少なくし続けた。【結果】仮設1、3、4は統計的に支持された。即ち、純粋失読患者はボカシ漢字の推測読みにおいて単純画数漢字の方が、抽象漢字より具象漢字の方が音読の成績が有意に良好であった仮説2は統計的に支持されなかった。即ち、後頭葉損傷患者は具象語、抽象語の推測読みの差は認められなかった。仮説5については支持された。被験者を独立変数とみなした時の3要因(ボカシ漢字の単純・複雑性、抽象・具象性、失読の有無)の分散分析の結果、全ての要因か有意であった(p<.001)。さらに、失読の有無を要因として2群間の分散分析をボカシ漢字の単純・複雑性、抽象・具象性失読の有無、被験者について分散分析したところ、全ての要因が有意であった(p<.001)。以上より、後頭葉損傷患者で失読がある患者のほうが失読のない患者より推測読みの成績が有意に悪く、かつそれが全ての要因に認められた。この仮設はデータを重ねさらに検証される必要がある。仮設6は統計的に支持されなかった。【考察】純粋失読患者ではボカシがとれ、漢字の輪郭が明瞭になるまで音読が不可能であった。そのため、後頭葉損傷例と異なり、ボカシが強い時点でのあて推量による読みは見られなかった。推測読みモデルで解釈すると純粋失読患者は以下の点に障害にあると思われた。(1)文字形態の検索。(2)概念駆動タイプの処理の結果正答可能性のある漢字形態プロトタイプの平均値と近似する候補を複数検索する。(3)ボカシ文字に平均値で最も近いと判断される漢字を決定する。(4)内的に想起した漢字の音韻・音声変換をする。今後これらの障害仮定を検証する。
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