研究概要 |
半球プリズム上に蒸着した金(Au)膜とSiウエファ-を試料としてSTMの発光実験を行った。金膜試料に関しては探針側とプリズム側の発光分光を行った。発光の角度依存からプリズム側発光が表面プラズモンによるものであることは本研究者らによりすでに指摘されていた〔K.Takeuchi et al.J.of Vac.Science & Technol.,B9 557(1991)〕が、発光分光の結果スペクトル・ピ-クも表面プラズモンの分散関係から期待されるものであることが新たにわかった。探針側発光スペクトル中にはプリズム側と共通する発光ピ-ク以外に多くの微細構造が見られた。従来の発光理論(トンネル電流により励起された局在プラズモンが探針側に発光すると共に、その一部は表面プラズモンに"崩壊"しプリズム側に発光する)ではこのことは理解できないものであり、今後の課題として残った。 Si試料に関しては可視光発光をはじめて観測した。従来STMの発光機構として知られていたのは,金属試料の局所あるいは表面プラズモンの発光と,半導体試料のバンド間遷移による発光である。これらの機構による発光は素直に理解できるものであるが、これらに限られる必然的理由はない。本研究計画では広く用いられている材料でしかも先の機構では発光しないSiについてSTMの発光研究を行った。その結果可視域での発光を観測した。その特性は,1)探針材質,2)n形かp形か,3)ド-プ量,4)探針電圧の極性,5)面方位に依存した。Siで発光が観測されたことはSTMの発光分光が材料に限定されることのない微小領域の光物性を研究する新たな手段となりうることを示唆するものである。
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