研究概要 |
本研究は,高γ値をもつ新物質を探索することを目的とする。この際,探索の指針としfー原子間の距離とfー原子の環境効果に注目し,狙いを定め合成と分析を行ってきた。本年度は効率よく,計5つの化合物をあつかったが,結果として,物性的に興味ある3つの物質を開発することが出来た。すなわち Er_2Fe_3Si_5,Er_2Fe_4Si_9,UZn_<12>である。 第1の化合物Er_2Fe_3Si_5は2.8Kにincomensurate,2.4Kにcomensurate磁気相転移をもつ反強磁性体であるが,さらに低温の0.93Kで超伝導状態に転移することを発見した。磁気秩序の低温側に超伝導転移を示す物質として,これまで知られている4物質:Y_9Co_7(T_N=5K,Tc=1.5K),URu_2Si_2(T_n=17.5K,Tc=1.1K),UPd_2Al_3(T_n=14K,Tc=2K),UNi_2Al_3(T_n=4.6K,Tc=1K)に加えて,今回,の我々の発見したEr_2Fe_3Si_5は第5番目となる。今後,この物質の超伝導と磁気秩序の共存状態の解明,さらに,R_2T_3S_<15>相の系統的な物質合成とそれらの磁性・超伝導研究の展開が重要課題として浮上してきた。 第2のEr_2Fe_4Si_9は、構造的には希土類イオンが平面三角格子を形成しそれが面に垂直方向に積層した層状構造をとっているため,スピン揺動系となることが期待される。結果は,予測したように,600mJ/mol*K^2にいたる高γ値を示し,5.6Kに磁気秩序を示す比熱のピークが現れ,さらに,低温でC/Tにupーturnが見られる。これは,重い電子系として非常に興味ある兆候であり,今後,展開すべき重要課題の一つなった。 第3の化合物UZn_<12>は本研究代表者奥田が東大物性研客員の際石川征靖所員との共同研究としてスタートし,その後,石川グループの努力によって単一相化に成功されたものである。やはり,900mJ/molK^2にいたる高γ値を示し,磁気秩序が0.4Kまで見えない点において重い電子系研究の重要試料の一つとなると考えられる。
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