研究概要 |
砂岩や砂質片麻岩に含まれる砕屑源性重鉱物のなかで,含Th,U,Pb鉱物であるモナザイトとジルコンに着目し,その化学組成から飛騨帯・美濃帯・舞鶴帯の砂岩および飛騨帯・領家帯・黒瀬川帯の砂質片麻岩の起源について検討を行なった。研究実績の概要は,以下の通りである。 (1).モナザイトやジルコンに小量含まれるTh,U,PbをEPMAで正確に定量し,それに基づいて両鉱物の年代(トリウム-ウラン-全鉛アイソクロン年代)を求める方法(CHIME法)を考察した(Suzuki et al.,1991)。 (2).このそCHIME法を使って,美濃帯および飛騨帯のジュラ紀砂岩中の砕屑性モナザイトの年代を測定した結果,砕屑性モナザイトの年代の大半が上麻生礫岩中の片麻岩の主要変成時期とほぼ等しい約1700〜1450Maの集中することが明らかとなった(Suzuki et al.,1991,Adachi et al.,1992)。 (3).一方,舞鶴帯の上部三畳系難波江層群砂岩中の砕屑性モナザイトのCHIME年代は約400〜500Maであり,美濃帯や飛騨帯のジュラ紀砂岩中の砕屑性モナザイトよりも,時代的に,ずっと若いことが分かった。難波江層群砂岩中の砕屑性ジルコンのCHIME年代は,モナザイトの年代に比べてバラツキが大きく,約250〜1100Maであった(足立・鈴木,1992)。 (4).飛騨帯の“灰色花崗岩"の年代をCHIME法を駆使して再検討したところ,“灰色花崗岩"のモナザイトおよびジルコンのCHIME年代はともに約250Maで,従来言われていたような先カンブリア時代の花崗岩ではなく,二畳期末に形成されたものであることが判明した(Suzuki and Adachi,1991a)。 (5).飛騨外縁帯の石炭系荒城川層に貫入しているメタガブロのK-Ar年代は約250Maで,飛騨外縁帯にも飛騨帯と同様に古生代末期の火成作用があったことが分かった(Adachi and Shibata,1991)。 (6).黒瀬川帯の花崗岩類・片麻岩類に対比できる南部北上山地の氷上花崗岩および壷ノ沢片麻岩中のモナザイト・ジルコンのCHIME年代を測定した結果,氷上花崗岩は約350Maに貫入固結したことが分かった。壷ノ沢片麻岩中の砕屑性ジルコンには,2000〜3000Maという古い年代の粒子が存在することも明らかとなった(Suzuki and Adachi,1991b)。
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