研究概要 |
西南日本内帯の白亜紀-第三紀珪長質火成岩類および,新生代火山岩類に含まれる捕獲岩類について,Sr・Nd同位体組成を含む地球化学的研究を広域的に行った.その結果,これら下部で形成されたと推定される珪長火成岩類は同位体的に広域変化を示し,4つの地域,すなわち山陽-瀬戸内地域(S帯),山陽北部地域(T帯),山陰-山口県西部(N帯)および北九州地域(W帯)に区分されることが明かとなった.これらのマグマソースは,上部地殻物質やジュラ紀以降の付加体に求めることはできず,これらとは異なる地殻下部物質の存在が明かとなった.またこの広域変化は地殻物質の混成等によってもたらされたものではなく,究極的にはマグマソース自身の広域的な化学的性質の違いに求められる.このような結果は,各地に分布する新生代火成岩類に包有される下部地殻由来の捕獲岩類に対する同位体の結果からも裏付けられる.また,これら火成岩類のソース物質の同位体組成は,20億年程度のdepleatedマントル年代を示しており,西南日本の地殻下部にはジュラ紀以降の付加体のみならず,20数億年前に形成された物質の存在が想定される.しかし,白亜紀-古第三紀における下部地殻物質の不均質性をもたらした要因については本研究では明かにされていない.しかし白亜紀以降の諸現象,日本海の形成とそれに伴う西南日本の大陸からの分離,フィリピン海プレートのしずみ込み等の影響を受け,西南日本下のマントルおよび地殻下部物質は時間と共に次第に地球化学的に改変され,中新世にもっともdepleatした状態になったことが明らかにされた.なお,本研究によって,上部マントルと下部地殻はペアーとなって,地域ごとに異なった地球化学的性質を持つ可能性が示され,今後の研究に大きな示唆を与えた.
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