研究概要 |
2年間の本研究で得られた新し知見は、次のようにまとめられる. 1)地球惑星固体物質のショック(衝突または衝撃)変成作用による鉱物集合体の組織、組成と構造変化を研究し、衝突に特有な高密度の研究データを得た. 2)一つの衝突で形成される衝撃変成シリカ集合体は,全体として約6種類ある.そのうち衝突のときしかできない高密度石英は,衝突の細粒放出物で最大の密度を示すことが分かった. 3)高密度石英は,弱いX線回折強度ピーク中で最高強度のピークをサーチして得られた衝撃変成石英である.結晶部分は平均原子間距離の縮小が顕著で,格子像写真では積層欠陥が顕著であるが,シリカガラス部分はランダムな格子縞を示し混入成分を多量に含んでいる. 4)斜長石は衝撃変成作用で,蒸発して細粒放出物中で衝撃変成石英集合体に鉱物変化するか,または微量元素を含んで非化学量論的な組成に変化してAn含有量を減少させる. 5)石炭岩のある衝突孔や有機物飛翔体による人工衝突実験では,高密度の衝撃変成グラファイト微細集合体が多量形成されることが分かった. 6)衝撃変成石英の密度変化から,衝撃変成作用と衝撃波変成進化作用の変成度が解明できる.人工衝突実験では,衝突試料が回収できて標準データとなるが,陸上と白亜紀末期(K/T)境界の衝突試料は,堆積環境などの違いによって最大密度が変化することが分かった. 7)人工衝突実験で,コア・マントル状の2大層構造が形成されることが分かり,鉄を含む大規模な衝突で鉄コア的な微惑星構造ができることが確認できた. 8)衝突変成物質は,衝突時に瞬間的にガス・メルト・高圧まで達した様々な物質がダイナミックに解放系で集合してできた急冷混合物であることが分かった. 9)月面と小惑星隕石における衝突変成物質集合体は,宇宙における衝突による新しい物質を含むだけでなく,太陽風の宇宙資源元素を蓄積している物質であることが分かった.
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