研究概要 |
1.酸化物超伝導体のマイクロ波による表面インピーダンスの研究 高温超伝導体における,超伝導状態での多体効果を明らかにすべく,マイクロ波表面インピーダンス測定装置を完成させた.超伝導空洞共振器を用い,試料のみの温度を変化させる方法に成功した.この装置を使用して,YBa_2Cu_3O_7及びBi_2Sr_2CaCu_2O_yにおける超伝導状態での準粒子散乱時間の変化やLa_<2-x>Sr_xCuO_4における異方的侵入長の測定に成功し,高温超伝導体における多体効果に関して新しい知見を得た.超伝導状態では常伝導状態から外挿されるよりもはるかに急激に準粒子の散乱確率が抑制されることが分かった.この結果は,酸化物高温超伝導体における散乱機構が電子的な起源によることを示唆し,超伝導状態の理解に対する重要なてがかりとなった.CuO_2面に対して垂直な方向のマイクロ波応答に関しては,Josephson的に結合したモデルで説明がつくことが結論された. 2.高温超伝導体周辺物質の物性 高温超伝導体の周辺物質として,Li-Ti-O,Li-Va-O,Ba-(Pb,Bi)-O,Bi-M-Co-O(M=Ca,Sr,Ba)の物性を研究し,高温超伝導体との類似性と異なる点を明らかにした.特にBi_2Sr_3Co_2O_9単結晶で抵抗率の異方性を測定し,CoO_2面内方向の抵抗率がそれに垂直方向に比べ10^<-4>程度小さいことが判明した. 3.銅酸化物の磁性 銅酸化物の物性を銅の持つスピン間の多体問題という観点から研究した.La_2CuO_4のCuをZnで置換した系に関し,単結晶で帯磁率を精密に測定して,解析することにより,その磁性の置換による変化を詳しく解明することに成功した.更に,銅酸化物であるCuGeO_3で一次元量子スピン系特有な新しい磁気的な相転移を発見した.
|