研究概要 |
1.爆発溶射アルミナ皮膜は集合組織を有さず,通常のsin^2φ法によって残留応力を測定することができる。皮膜の弾性定数は溶射条件に依存しており,気孔などの存在のためバルクの値より小さい。溶射皮膜中の残留応力は引張りで,かつ皮膜内でほぼ一様であった。なおこの残留応力は,100℃,3hrの焼鈍により変化しない。 2.CVD法で炭化チタン(TiC)を種々の熱膨張係数(CTE)をもつ金属に被覆した。このときの皮膜中の残留応力はCTEミスマッチから予想される値にほぼ一致したが,やや圧縮側にあった。この差は皮膜割れによる残留応力の解放と真応力成分に起因する。 3.CVD法により合成したTiC-SiC系複合皮膜を炭素基材上にコーティングした場合,X線プロフィルの波形分離の手法により各相の応力を測定することが可能であった。複合皮膜中の残留応力は3軸応力状態となっており,表面に垂直な応力の大きさは面内応力と同じオーダであった。 4.TiC-SiC系複合皮膜の破壊靭性をビッカース圧こん法により評価した。その値はTiCあるいはSiC単相の場合より複合膜では大きく,この高靭化の主な機構は,各相の符号の異なる残留応力によるき裂の偏向によるものである。 5.PVD法で被覆したTiC皮膜では集合組織が極度に発達しており,通常のsin^2φ法による高精度の残留応力測定は不可能であった。集合組織は,表面垂直方向に220配向をしていた。 6.セラミックコーティング材の強度評価の基礎として,セラミックス中の微小欠陥が破壊強度に及ぼす影響を解析するため,R曲線法を基にしたモデルを提案した。
|