研究概要 |
高温における比強度・比剛性の高さ,横方向・圧縮強度に優れ,かつテーラリング可能というMMCの特長を十二分に引出し,その新たな市場を開拓するためには,機械的性質と実際に使用される環境中における耐環境性の評価,とくに実働荷重条件下の環境強度特性とその破壊・劣化機構を解明することが必要不可欠である.本研究では,真空,高温環境下におけるγアルミナ長繊維強化アルミニウムとSicウィスカ強化Al合金の,単軸応力下と実用上重要である引張・ねじり組合せ応力下の実働荷重条件下における疲労を含む機械的性質と動的環境強度,およびその破壊機構を検討した.得られた結果をまとめると以下のようである.1)繊維を含有することにより,引張・ねじり組合せ応力下を含めて,引張強度,弾性率は,母材金属から上昇するが,破断伸びは低下する.2)組合せ・多軸応力下の強度はTsai-Hillの破壊基準で定まる.3)繊維を含有することにより,引張・ねじり組合せ応力下をふくめ,疲労強度は母材疲労強度から向上する.この向上はとくに室温下で顕著である.4)ウィスカ強化材の引張・ねじり組合せ応力下の疲労強度は,室温,高温下を含めて,軸応力成分が大きいとき主応力支配であるのに対して,ねじり応力成分が大きくなると相当応力支配に遷移する.5)アルミナ長繊維強化金属の真空中の引張強度,疲労強度は室温大気中強度より上昇する.6)アルミナ繊維強化金属の高応力下では大気中疲労強度に及ぼす応力比効果は見られないが,低応力下では,繊維方向き裂による圧縮応力下での繊維のバックリングにより,両振り応力下の疲労強度は片振り応力下の疲労強度から減少する.さらに,破壊起点部の電子顕微鏡による観察,電子顕微鏡中でのその場観察引張試験を実施することにより実環境下の動的応力下の破壊機構について検討を加えた.
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