研究概要 |
1.SCM415およびSNC815材で試験歯車を作製した.試験歯車の主要諸元はモジュ-ル5,歯数18,歯幅8mmである. 2.上記歯車に浸炭焼入れ処理を施した.有効浸炭深さはAGMAの推奨値を参考にして0.9mmとした。浸炭後に硬さの深さ方向分布を測定し,有効浸炭深さが所定の設計値にほぼ等しいことを確認した. 3.SNC815歯車については通常の浸炭焼入れの他に,浸炭後に二段焼入れを施した試験歯車も用意した.これは通常の熱処理法と比較して組織が微細になり強度向上に効果があると考えたためである. 4.SNC815歯車の曲げ疲労強度は約1090MPaであり,SCM415歯車の疲労強度より約200MPa高い.二段焼入れの場合疲労強度は約900MPaで,当初の予想と異なり強度向上の効果が認められなかった.二段焼入れの熱処理温度が適切でなく,表面に異常層が生じたことが原因と思われる.これに関して,研究者の提案した方法で初期き裂長さを求めて検討している. 5.研究者らは主としてSCM材浸炭歯車について曲げ疲労強度を硬さと残留応力から推定する実験式を得ているが,SNC歯車の場合を概ねその実験式で強度を推定できることを確かめた. 6.SCM415浸炭歯車の歯元のき裂進展をシミュレ-トし,この結果を用いて初期き裂長さを求め,歯元の異常層厚さと関連づけて論議した. 7.表面硬化歯車の強度向上のための後処理加工として,ショットピ-ニングと化学研磨に注目して処理条件を決定した.浸炭焼入れを施した歯車をいくつかのグル-プに分け後処理加工条件を変えた試験歯車を作製した.現在疲労試験と破壊力学に基づく考察を行っている. 8.浸炭層を模した曲げ試験片を作製した.AE法とき裂進展測定を併用して,き裂発生時期と発生条件,進展特性などを明らかにし,後処理加工による強度向上の機構を定量的に考察する研究を進めている.
|