研究概要 |
本研究は,2台の直列形アクティブフィルタのLCフィルタを併用したパワーラインコンディショナー(Power Line Conditioner)の開発を目的としている.これは不特定多数の家電機器やOA機器が発生する高調波を一括して補償しようとするもので、電圧計PWM変換器を整合変圧器を介して6.6kV配電線とLCフィルタに直列に接続した2台の直列形アクティブフィルタとその制御法に特長がある.本研究では,模擬配電系統(3φ,200V,60Hz,20kVA)を設計・製作し,これに複数台の高調波発生負荷と高調波の影響を受けやすい負荷を接続して基礎実験を行った.さらにLCフィルタを設計・製作し,高調波拡大現象や上位系統からの高調波電流の流入などのLCフィルタ特有の問題点を実験により明らかにした. 次に,パワーラインコンディショナーを設計・製作し,これを模擬配電系統を接続し,実験と周波数領域の解析の両面からその補償特性を検討した。その結果,1)上位系統に流出する高調波電流のみならず,パワーラインコンディショナーの接続点における高調波電圧をも低減できる2)下位系統の負荷間の高調波による干渉を抑制できることなどを実験により明らかにした. しかし,実験においては電源電流の高調波と受電点電圧の高調波を完全に抑制することはできなかった.この要因としては,実験に使用した高調波検出・演算回路の精度が挙げられる.例えば,受電点電圧に含まれる高調波が基本波電圧の1%とするとこれを検出して0.1%に低減しようとすると,電圧センサには0.1%以上の高精度が要求される.従って,本研究の成果の実用化に当たっては,パワーラインコンディショナーに使用するPWMインバータの高効率・高性能化と共に1)周波数特性の優れた高精度電圧・電流センサの開発2)新しい原理に基づく高調波検出・演算法の開発などを行う必要があり,現在新しい高調波検出・演算法を検討している.これは実験に使用した高調波検出・演算法に比べて,同一精度の電圧・電流センサを用いたとしても5倍も検出・演算精度が得られることを理論的に解析している.引き続き実験により,新しい高調波検出・演算法の精度について検討する予定である.
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