研究概要 |
例えば架橋に際し,大深度の海洋部では反力を直接地盤から得るのは非常に困難なため既住の方法では不可能であるか,構造物が巨大化が避けられない.そこで近年注目を沿びているのが浮力を用いた構造物であり,それにより人工島や浮体を利用した海洋横断橋の建設計画などがいろいろ見られるようになった.しかし,このような浮体の土木構造物という見地からの力学的挙動の把握に関する研究はまだ基礎的段階にあり,実用化するための基礎的データベースの構築や,安全照査のための合理的基準などの確立は達成されていない.最も重要な問題点は,反力を得るための浮体の安定性である.浮体は一般的にケーブルやチェーンなどによって係留されているため,浮体の挙動は結局ケーブル等の力学的性質と浮体の浮力との相互作用としてしか把握できない.さらに,ケーブルの力学的挙動が本質的に非線形であることも問題を複雑化している. ここでは浮体を利用した橋梁基礎モデルとして海中係留浮体の力学的挙動および耐荷力等の解析を行なう.簡単のため浮体自体は剛体と考え,複数本のケーブルで係留した.ケーブルの解析では軸力による伸び,潮流力,浮力を考慮し,支配方程式を直接積分することにより応答を求める.上部工からの荷重はすべて浮体への外力として作用させ,基礎としての安定性を中心に解析を行なった.その結果,ケーブルに十分張力が与えられれば浮体に作用するモーメントと浮体回転の関係は,モーメント以外の外力によりそれほど影響されないことが分かった.特に問題とした潮流力による影響はまったくみられなかったが,浮体のモーメントによる沈下は非線形で外力の影響を受ける場合があり,沈下に対する規定量が決められば,浮体はモーメントに対して線形バネとして扱うことが出来ることが明確になった.
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