研究概要 |
本研究では,渇水時の実時間貯水池操作の複雑さが, 1.操作の鍵となる情報が現在の貯水量と将来長期にわたる流入量予測情報であり,後者を十分な精度で得ることが現段階では困難であること, 2.貯水池の操作方針は,目標貯水量と目標放流量によって規定されるが,これら2つの指針も場面によってそれぞれ目標,制約の両側面を持っており,意志決定の条件が明確に規定しづらいこと, といった2つの側面から構成されることに着目し,これらの問題に対応するため,貯水池への将来流入量の予測情報がファジイ集合で与えられる場合について,ファジイシステムおよびファジイ意志決定手法を用いた放流量決定手法を開発した. さらに,現在,利害関係者の合議によって行われている渇水時の貯水池操作に関する政策決定プロセスを数学的にモデル化し,これを用いて現行の意思決定機構が意思決定のために用いることのできる情報の精度,すなわち貯水池への流入量予測情報の精度と,意思決定基準の精度(目標貯水量や目標放流量の緩和の程度)との関係に,どのような影響を受けるのかを明らかにしようと試みた.具体的には,(1)貯水池操作の鍵となる流入量予測情報の形態に応じて,貯水池操作システムに対し,確率システム・ファジイシステムの二通りのとらえ方があり,(2)操作方針となる目標放流量と目標貯水量緩和する程度は,人間の主観による要素が大きいことを受け,確率システム・ファジイシステムに対するファジイ意思決定手法を用いることにより,現行の政策決定過程をモデル化した. また,開発したモデルを用いて,予測情報の精度および意思決定基準の精度を,それぞれ二通りで変化させ,放流量を決定し,それぞれの持つ相互関係が意思決定機構に及ぼす影響を分析した.
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