研究概要 |
1)安定海浜の形成理論 砕波帯の幅が海浜の長に比べて十分小さいという仮定で,海浜流の方程式に境界層の方法を適用して沿岸流の方程式を誘導し,これに沿岸漂砂量則を加えて得られた沿岸漂砂量の一般式と海浜変形の連続式から,沿岸漂砂量が一定である安定海浜の方程式を誘導した。その理論解から安定海浜の理論形状を求めた。この結果は沿岸漂砂の上手および下手に2つの海浜変形の境界条件が存在すると,そこに安定海浜が形成できることを示し,海岸侵食制御の原理を与えると結論できた。理論形状を天橋立海岸に形成されている動的に安定な海浜群の形状と比較して、その適用性を確かめた。さらに,三次元海浜変形モデルによって,安定海浜の形成過程を確認した。 2)現地海岸への適用性 安定海浜の形成理論が確立できたので,その適用から海岸侵食を制御する方法論を検討した。a)天橋立海岸においては,サンドバイパス工法との併用によって,動的に安定な海浜群が形成できることを実証するとともに,実施工における規範を与えることができた。b)海岸侵食から海岸を安定化するためには,大規模海浜過程を究明したうえで,安定海浜群を形成させるべきであり,その具体的な方法を上越・大潟海岸に示し,水理実験によっても検討して,その適用性を明らかにした。 3)総括 これらの安定海浜の形成に関する基礎研究に基づいて,海岸侵食制御の方法として安定海浜工法を提案し,その基本的な方法論を示し,天橋立海岸および上越・大潟海岸のほか,新潟海岸,バリ島の珊瑚礁海岸への適用性についても言及した。
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