研究概要 |
高Mn-Crオーステナイト鋼は低放射化の観点から核融合炉構造材料としての関心が払われている。本研究はオーステナイト相の安定性が高いFe-12%Cr-15%Mn合金に着目し、これを基本成分とする耐熱鋼を開発する目的で、C,N,W,V,Ti,Ta等の低放射化合金元素の添加組合を変えた材料につき、微細組織変化及び高温強度に関する基礎的研究を行った。また、高温強度及び低温靭性については、核融合炉構造材料の参照材料として多くの研究が為されているJPCA,JFMSとの比較を行い、本系オーステナイト鋼の高温強度及び低温靭性の達成度を調べた。V,V+Ti,V+Ti+Ta添加材では、それぞれ析出相、分布が異なり高密度に極微細なVNが析出するV添加材が、最も高温引張強度が高くなった。V+Ti添加材では、VNは形成されず、やや粗いTiNの形成が優先析出し、V+Ti+Ta添加材では球状の粗大なTaNが形成されるのみで高温引張強度は高められないことが判明した。一方、長時間のクリープラプチャー強度はV+Ti添加材が最も大きく、JPCA材とほぼ同等であった。室温付近の低温靭性も最も優れていることから、Ti添加によるTiNの析出が最も有用であることが推察された。しかし、室温以下の低温靭性は316系オーステナイト鋼では温度依存性がなく、液体窒素温度付近でも靭性の劣化が認められないのに対し、本系オーステナイト鋼では室温以下低温側での靭性の劣化があり、組織観察の結果から多量に形成されるεマルテンサイト及び双晶、また粒界に形成されるM_<23>C_6型炭化物によるものと考えられる。Nの増量添加によるオーステナイト相のより強力な安定化を計る必要があると考えられる。
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