研究概要 |
本研究では,InGaAs系歪み量子井戸レーザの開発にあたりまず,In_xCa_<1-x>As/GaAs(x【similar or equal】0.2)単一歪量子井戸(Strained Single Quantum Well:SSQW)薄膜の井戸層であるIn_xGa_<1-x>Asの成長条件を変えて作製した試料の結晶性,光学特性をPhotoluminescence(PL)法によって評価した。 基板温度540℃でMBE(Molecular Beam Epitaxy)法によりIn_xGa_<1-x>As/GaAs(x=0.211)SSQW薄膜(井戸層幅10Monolayer)を作製しそのPL測定を行ったところ,得られたPLスペクトルのピーク波長が理論計算で導かれる発光波長より短波長側にシフトしていることが確認された。これは井戸層であるIn_xGa_<1-x>AsのMBE成長中におけるInの脱離(再蒸発)現象によるものであると考えられる。このInの脱離を抑制するために基板温度の低温化を計り,低温成長に適した成長方法であるMEE(Migration Enhanced Epitaxy)法を用いてIn_xGa_<1-x>As層の成長を行った。基板温度290℃で作製したSSQW薄膜のPLスペクトルから,低温成長によってInの脱離を抑制できることが分かったが,高温でMBE法により作製した試料と比べてその結晶性,光学特性は低下した。 そこで低温成長においても高温成長時に迫る結晶性,光学特性を得るためにIII族原子のマイグレーション時間を十分にとり,低温成長において顕著になる過剰Asの付着を最小限に抑えることで,結晶性,光学特性の優れたSSQW薄膜を作製することを試みた。そのPL測定から,高温成長時にみられるInの脱離を抑制し,意図した組成で結晶性および光学特性の優れたSSQW薄膜を作製でき,歪み量子井戸レーザへの応用が可箱であることが分かった。
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