研究概要 |
従来の制振複合材料の多くは,高分子系樹脂層を拘束型あるいは非拘束型に用いたものであり,耐熱性と剛性の大きな基材には適用できないという難点があった。 本研究は耐熱性に優れ,しかも剛性の大きな基材に対しても制振効果の得られる複合材料を成膜技術の一つである溶射法の応用によって開発することを目的にしたものである。研究は各年度の実施計画に概ねしたがって遂行され,次のような成果を得た。 1.溶射皮膜形成による制振効果は皮膜の種類とその構成及び基材との組合せに依存する。皮膜厚さが制振効果におよぼす影響について理論的検討を行い,損失係数が基材と皮膜の厚さ比及び縦弾性係数比に依拠することを明らかにした。 2.基材のアルミナ皮膜を直接被覆した場合には衝突音の卓越周波数は高周波数側に移行するのに対し,ニッケル-クロム合金皮膜との複層皮膜では卓越周波数は逆に低域側に移行する現象が観察された。これら周波数の移動に関し複合材モデルを用いた理論的検討を行い,その妥当性を明らかにした。 3.アルミナ皮膜の形成によって音圧波形の尖頭部は平坦化し,聴覚機能による聞こえの大きさを小さくする方向に作用する。 4.打撃によって生ずる音と振動の間に強い相関のあることを実験的及び理論的に明らかにした。 以上のように,耐熱性に優れ高剛性を有する制振複合材料創製への溶射法の応用について実験的及び理論的検討を行い,同法によれば従来の高分子系制振材とは異なった特徴を有する制振材料の開発が期待できることを明らかにした。
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