| 研究概要 |
本研究では,アーク溶接(溶解)現象の解明を目的として,アーク放電の基礎特性を調べ,さらに,このアーク放電を溶接に応用した場合のアーク・溶融池系界面における金属蒸発現象を静的な直流アーク溶接と動的な交流アーク溶接に分けて検討している.
直流アーク放電においては,雰囲気圧力の増加にともなってアーク電圧が上昇し,その結果,アーク自身の出力が上昇するため,陽極への入熱が増加する.また,作動ガスの種類によってもアーク電圧が異なり,これに伴って陽極への入熱も異なることを明らかにしている.この直流アーク放電を使って陽極金属を溶融・蒸発させて,その蒸発形態を分光法によって観察した結果,雰囲気ガスの種類によってアーク圧力が異なることを明らかにしている.さらに,陽極への入熱とアーク圧力のバランスが溶融池蒸発現象の支配要因の一つであることを示唆している.アーク放電を交流アーク溶接に応用した場合,Al合金のクリーニング域表面状態は,Al合金の種類によらず,White zoneとBright zoneの二つの領域から構成されている.陰極点は,まず溶融池上に発生し,その後時間の経過とともに(放射状に)クリーニング域に拡がることを明らかにしている.また,陰極点は,合金種類によって数,径,速度において異なり,これは合金添加物に影響されることを示唆している.分光法によってクリーニング域からの蒸発物質の測定を行った結果,Alに比べてMgの方が蒸発しやすいことを明らかにしている.材料の仕事関数と蒸気圧は,アーク溶接における材料蒸発現象の支配要因の一つであることを示唆している.
以上より,本研究では,アーク・溶融池系の蒸発現象に対して,アーク側ではアーク入熱とアーク圧力,一方,材料側ではその仕事関数と蒸気圧が大きく影響を与えていることを明らかにしている.
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