研究概要 |
本研究の目的は,高齢者の走動作の加齢による変容をとらえることであったが,以下のような一連の研究を行った。 1.身体活動調査アンケートの再現性および妥当性の検討 茨城県在住の高齢者339名に身体活動調査を行った。その結果,第1回と第2回のスコアとの相関係数は0.502であり、中程度の再現性があることがわかった。また万歩計を用いて妥当性を検討したが,中程度の妥当性が得られた。 2.日本人高齢者の身体部分係数の算出 男子27名(年齢62歳〜86歳)に数字モデルを適用して、身体各部の質量中心の位置、質量比,慣性モーメントを算出し,青年のものと比較した。その結果,高齢者では頭部,胴体,前腕などの質量比が大きいこと,加齢にともなって質量比は頭部が増大,胴体などは減少するが,質量中心位置,慣性モーメントには明確な変化が認められないことなどがわかった。 3.マスターズランナーの疾走フォームの変容に関する研究 マスターズランナー(男子46名,年齢40歳から81歳)を対象として,5000mレース中の疾走フォームを高速度VTRを用いて分析した。その結果,加齢にともなってピッチはあまり減少しないが,ストライド,特に非支持期のストライドが大きく減少するため,疾走スピードが減少することがわかった。また,高齢者の疾走フォームは,加齢よりも疾走速度の影響をより強く受けていたが,それでも中年者のものに比べて,体幹の前傾が大きく,股関節の伸展が小さいという特徴がみられた。 4.立幅跳の踏切における下肢関節パワーの発揮 2.と同じ被験者を用いて立幅跳の踏切における下肢関節パワーを測定した。その結果,加齢にともなって,下肢の伸展関節モ-エントおよびコンセントリックな筋収縮によるパワーの最大値が減少することがわかった。また減少の程度は股,足,膝関節の順で大きかった。
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