研究概要 |
本研究は、NaClなどに代表されるアルカリハライドクラスターや、炭素クラスター(あるいはフレーレン)などに代表される半導体クラスターのレーザー励起による解離・分裂の機構の解明を目指すものである。 (1)(NaCl)_nクラスターの光解離と光イオン化: 現在までの研究でNaClのレーザー蒸発では、Na^+(NaCl)_<n-1>型のクラスターイオンが生成することがわかっている。これは、(NaCl)_n+hV→Na^+…Cl(NaCl)_<n-1>+e^-→Na^+(NaCl)_<n-1>+Cl+e^-,のクラスター内部反応が進行するためである。本研究では、中性の(NaCl)_nクラスターのレーザー光イオン化で、(NaCl)^+_n型のintactクラスターイオンを初めて検出することに成功した。これは、レーザーによるソフトな光イオン化が行なわれたため、Na^+…Clの解離が起らなかったためと考えられる。また、今回初めて、Na^+(NaCl)_<n-1>のレーザー光解離により、Na^+_2(NaCl)_<n-2>および、Na^+_3(NaCl)_<n-3>のクラスターイオンを観測した。 (2)大きなサイズのフレーレンヒ金属内包フレーレンの光イオン化と解離:C_<60>,C_<70>以上の大きなサイズのフレーレン(C_<76>,C_<78>,C_<84>,C_<90>〜C_<96>)は、C_<60>などと比較して、レーザー光照射に対して同程度の安定性をもつことが解った。さらに、金属を内包したフレーレンのレーザー光解離程過を調べた。スカンジウム原子を2個内包したフレーレンSc_2@C_<82>やSc_2@C_<82>は、通常のフレーレンと同様にC_2を放出する解離程過が主であることがわかった。
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