研究概要 |
1.ピロン類の[4+2]型環化反応:α-ピロン、クマリンおよびクロモンなどをシリルトリフレートによりシロキシピリリウム塩として活性化後、各種の共役ジエンと反応する[4+2]型環化反応を開発した。 2.活性化クマリンの不斉[4+2]型環化反応:光学活性な3-フェニルメンチルオキシカルボニルクマリンと共役ジエンとのDiels-Alder反応において、面選択的に単一生成物のみが良好な収率(89%)で生成した。この生成物の構造は各種スペクトルにより決定した。特に環接合部の立体配置は、X線結晶解析によりシス配置でR-立体配置であることが明らかとなった。2-メチル-1,3-ブタジエンや共役シリルオキシジエンとの反応では、高い位置および立体選択性で環化生成物が得られた。 3.活性化クロモンの不斉[4+2]型環化反応:塩化亜鉛の存在下、塩化メチレン溶液中、室温で3位に(-)-8-フェニルメンチルオキシカルボニル基を導入したクロモン誘導体に2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンを反応させると、高い立体選択性(100%de)で環化生成物が得られた。この際も2-メチル-1,3-ブタジエンと反応すると位置及び立体選択性とも非常に高くなった。環化生成物の環接合部はシス配置で、立体配置はクマリンの場合から推定して2S,3Sと考えられる。 4.クマリン、クロモンの[4+2]型環化反応の反応機構:反応中間体の捕捉や生成物の立体化学の考察およびモデル化合物のHuckel拡張法で求めた反応部位のπ-軌道の対称性などを考慮して反応機構を推定した。クマリンと共役ジエンとの反応は活性化した場合も活性化しない場合にもDiels-Alder反応にみられる典型的な協奏的な反応機構であるが、ピリリウム塩として活性化したクロモンと共役ジエンとの反応はアリルカチオン中間体を経由する段階的な反応機構で進んでいろものと思われる。
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