研究概要 |
1.シガトキシン(CTX)の生合成前駆体ガンビエトキシン(GT4B)は、225nm付近にスプリットCDコットン(207nm,Δεー7.4;239nm,Δε+0.69)を示す。その原因となる発色団は側鎖部ジエン以外にありえないので、コットンはジエン自身、またはジエンとA環のオレフィン及びエ-テル間の捻じれに由来すると考えられる。ABCD環はトランスなので立体配座は固定されており、問題の捻じれは5位の絶対配置によって決定されているはずである。そこで、ジエン側鎖を持つAB環部分を我々が最近開発した新合成法を用いて立体選択的に合成してCDスペクトルを比較した。最長波長部のコットン効果(237nm,Δεー0.83)から、5位の絶対配置はR配置であることが確実になった。しかし、GT4Bとモデル化合物のCDは完全な対称形になっていないので、不確実さが残っている。DE環部のアリルエ-テルの存在に由来する可能性が高いので、更に、5環性のABCDE環モデルを合成してCDを比較して最終的な結論を出すべく検討中である。 2.更に、最近開発した不斉ジヒドロキシル化法を用いて、上記AB環モデルを、CTXに対応する2種の立体異性体末端ジオ-ルに変換する方法を確立した。両異性体のNMR、およびキラルシフト試薬によるNMRスペクトルの変化をCTXと詳細に比較したが、立体化学に関する知見は得られなかった。その他種々検討した結果、2位のOHと6位のオレフィン水素間のNOEの強度の差から立体化学を識別できる可能性があることが分かって来た。詳細に検討中である。 3.安価なDーグルコ-スから、新しい環化法を活用して、免疫抗原として使える可能性の高いABCD環モデルを合成すべく検討中である。
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