研究概要 |
医薬品、ビタミン、調味料、農薬あるいは香料などの生命・生理現象にかかわる物質は厳密なキラリティ-の調和による分子認識をとうしてその機能を発揮するので、光学的に純粋に目的とする立体化学をもって供給されなければならない。本研究者は、数多くの光学活性物質供給法のなかで、人工的三次元構造修飾が原理的にはいかようにも可能である金属錯体の触媒機能を活用する純化学的不斉増殖法が最も直接的であると確信するものであるが、基本的合成操作の一つである水素化の不斉触媒反応開拓研究を行ない、Z,Z'ービス(ジフェニルホスフィノ)ーI,I'ービナフチル(BINAP)を配位子とするルテニウム二価錯体が近傍に配位性へテロ原子を有する各種ケトン類ないしオレフィン類に対して従来類例を見ない高いエナンチオ選択性を示すことを見いだした。本法を最大限に活用して、(1)エナミド類の不斉水素化法を基軸とするイソキノリンアルカロイドおよびαーないしβーアミノ酸の一般合成法の確立、(2)α,βー不飽和カルボン酸類の不斉水素化法を基軸とする光学活性αーないしβー置換ラクトン類およびαーアリ-ルプロピオン酸誘導体の合成、(3)アリルアルコ-ル類の不斉水素化法によるプロスタグランジン合成重要中間体、ビタミンなどの有用テルペン類の合成、(4)βーケトエステル類の不斉水素化法に基づくβーヒドロキシ-Yーアミノ酸の合成、(5)光学的に不安的なαー置換βーケトエステル類の不斉水素化による動的速度論分割法に基づくβーヒドロキシーαーアミノ酸,βーラクタムおよびカルバサイクリン合成鍵中間体の高位体選択的合成を実現することができた。研究費は高感度高速液体クロマトグラフ用のデ-タ処理装置、合成反応・分析に必要な各種反応剤、重溶媒、分離精製資材、特種ガラス器具などの購入に有効に活用した。本研究補助金により所期の目的は完全に達成されたことを報告したい。
|