研究概要 |
炭酸ソーダスラグの高純度銅製造への適用性に関する研究の一環として,本年度当初に計画した通り,Seを不純物元素としてとりあげ,炭酸ソーダスラグの精錬能力の指標となるソーダ系スラグ-溶銅間のSeの平衡分配比(=(スラグ中の濃度)/[メタル中の濃度])を広いスラグ組成にわたって推定するのに必要な熱力学的諸量を決定するため,以下の実験を実施した. (1)NaO_<0.5>-CO_2-SeO_2系融体中のNaO_<0.5>の活量測定 固体電解質としてβ"-アルミナを用いた電気化学的方法により種々のCO_2分圧下における上記融体中のNaO_<0.5>の活量を決定した. (2)NaO_<0.5>-CO_2-SeO_2系融体中のSeO_2の活量測定 上記スラグと溶銅間のSeの分配平衡実験より,SeO_2の活量を決定する.この値と(1)の結果とを結びつけることにより,広いスラグ組成にわたってSeO_2の活量を計算した. (3)NaO_<0.5>-SeO_2系融体中のCO_2溶解度の測定 種々のCO_2分圧の気相と上記融体とを平衡させ,CO_2溶解度を化学分析法により決定した. 以上の結果から,本系スラグ-溶銅間のSeの分配比を温度,CO_2分圧,酸素分圧,スラグ組成等の関数として推算することができた.その結果,SeはCO_2分圧が低いほど,酸素分圧が高いほど大きな分配比を持つことが分かった. 純粋な炭酸ソーダスラグを用いた分配実験の結果より,Seは,高酸素分圧側では,酸化物として除去される酸化精錬によって,また,低酸素分圧側ではNaとの金属間化合物を生成して除去される還元精錬によって除去できることがわかった.
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