研究概要 |
本研究は機能材料,特に電子部品材料等の室内での微量腐食速度と腐食反応機構を調べるための新しい計測方法を開発すること,大気腐食条件の乾湿繰り返し環境での腐食測定,モニタリング法を確立することを目的とし,通常の水溶液環境での腐食研究とは異なる条件における測定法を確立しようとするものである。 本研究では主に次の3つの課題について研究を行ったが,当初予定していた水晶振動子秤量(QCM)法については付着水等の測定には理論的に問題があることが判明しこの報告には含めなかった。 (1)「Kelvin法による液薄膜下での電極反応の測定」では,溶液薄膜の下で起こる腐食のカソード反応である酸素の還元反応に注目し,その速度に及ぼす液膜の厚さ,溶液組成,金属種の影響を調べた。液膜の厚さが溶液内の拡散層よりも薄くなると,酸素の限界電流は増加するが,従来考えとは異なり,20μm程度で最大値示すこと,溶液の濃度によっても異なることなどを見い出し,単純な拡散律速ではないことがわかった。 (2)「寄生容量を利用したKelvin法による測定装置の開発」では,従来Kelvin法による測定の誤差要因としてその排除に努めてきた寄生容量を積極的に利用し,簡単で迅速な測定法を考案し,電極面を走査することによって2次元的な電位分布を測定する装置を開発・試作した。 (3)「交流インピーダンス法による乾湿繰り返し腐食のモニタリング」では,薄い液膜が乾燥する過程での腐食速度の変化を交流インピーダンス法でモニタリングすることを試み,インピーダンス特性の理論的解析と実験を行った。乾湿を繰り返す銅および鉄鋼で溶液が乾燥する直前に腐食速度が急増すること,その機構について検討した。また,液膜の厚さが20μm前後で腐食速度が最も大きくなることを確認した。
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