研究概要 |
1.熱音響放出測定法(AE) AE測定の装置を試作し,数種の無機塩固体について,熱分解反応,脱水反応,結晶転移過程を検討した。その結果,AEピークから昇温下における無機塩固体の反応挙動を調べる上で,有用な情報が得られることが明らかになった。 2.鉄鋼の腐食反応生成物としての酸化鉄の熱分析 沈殿法で酸化鉄を調製する際に,Cu^<2+>,Co^<2+>,Na^<2+>,Cr^<3+>などの異種金属イオンを添加すると,沈殿の熟成処理によるα-FeOOHへの結晶化,および加熱によるα-Fe_2O_3への結晶化が抑制されることが熱分析(DTA,TG,DSC)測定の結果明らかになった。 3.La(III)-Cr(VI)前駆体の熱分解によるLaCrO_3の調製 La(III)とCr(VI)の化合物からLa(CH_3COO)(CrO_4)・nH_2Oと推定される前駆体を調製し,これを熱分解すると従来の合成法よりも低温でLaCrO_3が生成することがわかった。熱分解挙動をTG-DTA,XRD,IR,化学分析などの手法を用いて検討し,前駆体の分解による中間体LaCrO_4の生成と,これから酸素が脱離してLaCrO_3に結晶転移する二つの過程からなることを明らかにした。 4.A-サイト置換型La-Cr酸化物皮膜の電気化学的調製 クロム酸とLaおよび置換金属(M=Ca,Sr)の硝酸塩の混合溶液中で,カソード分極すると,電極金属表面が(LaOH)_<1-x>MxCrO_4・nH_2Oと推定される前駆体皮膜で被覆できることを明らかにした。この前駆体は窒素または空気中で650〜1000℃で加熱すると,ペロブスカイト構造を有する酸化物,La_<1-x>MxCrO_3になり,種々の条件下での酸化反応に対して,下地の金属の耐酸化性を著しく向上させることがわかった。
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