研究概要 |
有機化合物の有用物質には環系構造を含むものが多く、本研究はその様な環系構造構築の為に、ヘテロ原子を多様に用いた(Siの特有な反応性の利用、Fの利用、環構成成分にN、S等を利用)の2つに大別されるアプローチを行った。 (1)一般環系に対する環形成反応:[m+n]環化付加反応において、Si原子を活用した反応様式の開発を行った。m=4,n=2ではピロールの一辺と共役させたジエン成分を用いたインドール合成を開発した。m=4,n=3ではカルボニル基と共役したシリルエノールエーテルを用いたオキシアリルカチオン型で進行する7員環形成反応を開発した。F原子の活用として、CF_3置換ピロールの合成やF版Arndt-Eistert反応の開発を行った。 (2)特異環に対する環反応性の検討:フラーレンを特異環系の1つに加えた。アダマンタンに対しては、架橋位や橋頭位での反応性中間体を生起させ付加反応性を検討した。架橋位ではニトロンを合成しその1,3-双極性環化付加反応を試み、特異付加配向性によるイソオキサゾリンの生成を明らかにした。橋頭位では隣接する炭素上にカルベンを発生させ骨格との優先的な相互作用によるANTI-BREDT-型の橋頭位オレフィンの生成を確認した。カルベン上の置換基に共役したフェニル基・エステル基を用いた為に、このオレフィンは室温付近でも安定に存在するという最初の例となった。結合性はイオン性とラジカル性の両方をあわせ持つ事が判明し、付加反応により3,4-ジ置換ホモアダマンタン誘導体の合成に利用された。スクアリン酸に対しては、従来法にはない親電子条件下での骨格上での炭素一炭素結合反応として不飽和シランとの反応を全般的に検討した。その結果、スクアリン酸及び不飽和シラン上の置換基の性質、ルイス酸、反応温度に依存し1,2-,1,4-付加が起こる事が明らかとなった。生成物は天然物合成に有用なブテノリド骨格に変換される事を見いだした。C_<60>に対しては、アゾ化合物や数種の1,3-ダイポール・ジエンに付加反応性のある事を確認した。
|