研究概要 |
現在まで成功例のない1,3-双極性環状付加反応のルイス酸触媒作用を研究し、次に示す顕著な成果を得た。1)(アルキリデンアミノ)アセタートのリチウムエノラートはN-リチオ化アゾメチンイリドとして動き、α,β-不飽和エステルとの反応で環状付加体のピロリジン-2-エステルを立体選択的に与える。種々のキラルなα,β-不飽和エステルを用いることにより高選択的不斉環状付加反応が達成できた。2)嵩高いアルデヒドあるいはケトンから誘導した(アルキリデンアミノ)アセタートのリチウムエノラートは、α,β-不飽和エステルに対してアンチ選択的Michael付加反応を起こす。カンファーイミンのエノラートとβ位に置換基をもつα,β-不飽和エステルとのMichael付加反応は完全にジアステレオ選択的であった。3)塩化ヒドロキシモイルあるいはヒドラゾノイルと有機金属試薬との反応により双極子/ルイス酸錯体の生体が達成できた。4)この内、マグネシウム錯体と2-(1-ヒドロキシアルキル)アクリラートとの1,3-双極性環状付加反応は高いシン選択性を示し、フリー双極子が示すアンチ選択性が逆転した。5)α位にキラリティーをもつアリル系アルコールとニトリルオキシド/MgBrCl錯体との反応は完全にシン選択的に進む。特に、アルコールのマグネシウムアルコキシドを双極子発生の塩基として用いる方法が有効であった。6)γ位に置換基をもつアリル系アルコールのマグネシウムアルコキシドを用いると、ニトリルオキシドの環状付加反応は完全にレギオ選択的となり、イソオキサゾリン-5-メタノール誘導体のみを生成する。マグネシウムアルコキシドは、フリーアルコールと比較して著しい反応性の増加を示した。7)ニトロン環状付加反応でもほぼ同様の効果が観察された。 この研究を通して、ルイス酸触媒の使用により1,3-双極性環状付加反応の反応性、レギオおよび立体選択性の著しい向上が達成できることが初めて明らかにされ、新しい有機合成方法論が導出できたものと評価される。
|