研究概要 |
近年、錯体触媒による二酸化炭素還元反応は非常に活発に研究されているが、それらの反応の生成物は二電子還元反応によるCOとHCOOHに限られている。本研究では、C1原料としての二酸化炭素の有効利用を目的として錯体触媒による炭素-炭素結合生成を伴った二酸化炭素の多電子還元を行なった。[Ru(bpy)_2(CO)_2]^<2+>(bpy=2,2'-ビピリジン)は水溶液中では[Ru(bpy)_2(CO)-(C(O)OH]^+と[Ru(bpy)_2(CO)-(η1-CO_2]との平衡系で存在することを以前提案していたが、本研究において二酸化炭素還元反応の反応中間体としてのCO_2付加体、[Ru(bpy)_2(CO)(η1-CO_2)]を単離とするとともに、これら3種の錯体のX線構造解析によりCO、HC(O)OHの前駆体、およびCO_2付加体の構造を明らかにし、錯体触媒による二酸化炭素の2電子還元反応機構を確立した。さらに、CO前駆体としての[Ru(bpy)_2(CO)_2]^<2+>がNaBH_4と反応してCO基が順次フォルミル基([Ru(bpy)_2(CO)(C(O)H)]^+)およびヒドロキシメチル基([Ru(bpy)_2(CO)(CH_2OH)]^+)に還元されてCH_3OHが生成すること、ならびにフォルミル錯体[Ru(bpy)_2(CO)(C(O)H)]^+が室温では不安定なことに着目して、[Ru(bpy)(trpy)(CO)]^<2+>(trpy=ターピリジン)を触媒とする二酸化炭素の電気化学的還元反応を-20℃で行なうことにより二酸化炭素の2電子還元体(CO,HCOOH)、4電子還元体(HC(O)H)および6電子還元体(CH_3OH)が生成することのみならず、炭素-炭素結合生成を伴ったC2生成物(HC(O)COOH,HOCH_2COOH)が効率よく生成することを初めて明かにした。さらに、それらの多電子還元および炭素-炭素結合生成の反応中間体はともに[Ru(bpy)(trpy)(C(O)H)]^+、[Ru(bpy)(trpy)-(CH_2OH)]^+であることも明らかにした。
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